多読の理論は理解したところで、
次に考えるべきは、どのようにはじめ、どのように日常に取り入れ、どのように習慣とするか、です。
多読の理論は説得力があるのに、多読というのはスタンダードな英語習得法としてあまり認知されていないような気がします。
ワタシが今まで知らなかっただけなのかもしれませんが、WEBを色々と眺めていても、いわゆる「多読ブログ」が半年ぐらいで更新が止まったまま放置されているものがチラホラあります。
英語学習の救世主とばかりにチャレンジはするのですが、しばらくして効果が表れないのか、多読をやめてしまう人も多いのでしょう。
それもそうだなと、なんとなく、想像はつきます。
まず、誤解が多そうな点を整理しておきましょう。
- 100万語を読むことが目標ではない
- 語数の少ない入門レベルの本の書籍の探し方
- 読むこと自体に楽しさを見つけて習慣にできるか
100万語を読むことが目標ではない
ここが一番誤解がありそうです。
100万語というのは膨大な数です。
100万円だとしたらかなり大金だと感じる人が多いでしょう。
この数字の魔力に取りつかれて「100万語さえ達成すれば英語がペラペラに自由自在に使えるようになる」というイメージを持ってしまう、そんなキーワードが100万語なのでしょう。
使える英語を目指す「めざせ100万語!」では、使用語彙1000語を目標にしようと思います。
ちくま学芸文庫 酒井邦秀著
「快読100万語!ペーパーバックへの道」P.236より
そもそも、懸命にやっと100万語読んだとしても、使用語彙の1000語が身につくかどうかというレベルなのです。
それを、勝手に「100万語読めば大丈夫!」と解釈してしまい、100万語を達成すること自体を目的にしてしまいがちに思います。
ここが落とし穴なのではないかと思います。
ランニングで例えるならば、月間走行距離を伸ばすことが生き甲斐になるようなものかもしれません。
「ランニングで月間300キロ走る」
きっと大変な努力なのだと思います。
しかし、ノロノロ、ダラダラ走って300キロなのか、
集中して短時間でも脚に効果的に負荷をかけて月間100キロしか走らないのか、
この違いは、自ずと結果が違ってくるのでしょう。
ちなみに後者の例は小出監督のトレーニング方法です。
ランニングと同じで「ただ100万語を読むこと」がだけが目的ではないはずです。
さきほどの引用をもう一度よくよく読んでみると、「使用語彙1000語」の習得が目標なのです。
そのためには、最低でも「1000倍の1,000,000語の読書が必要」だとこの本では言っているにすぎないのです。
このあたりが大きな誤解を生みそうなところなのかなと思います。
典型的な誤解はたぶんこんな感じなのでしょう。
「100万語を達成すればいいのか」
「100万語って、でも、大変だな」
「総語数500語の本だと、2,000冊も読まないといけないのか」
「げ。たいへんそう」
「まてよ。総語数5,000語の本なら200冊でイイのか」
「2万語の本なら50冊でイイのか」
「そのくらいならいけるかも」
「毎日1冊読めば、2か月くらいで100万語達成だ」
「よし、語数が多くておススメの本はどれだ?」
ちなみに、総語数20,000語の本というのはどんな本かというと、
使用されている語彙は2,000語レベルになります。
使用語彙1,000語の習得を目指すべきところを使用語彙2,000語の本を読む。
これがいかに無理なことをしているかが分かるでしょう。
途中で読めなくなるだろうと想像するのは簡単なことのように思えます。
語数の少ない入門レベルの本の書籍の探し方
なぜ、語数の多い本を選んでしまうのか。
なぜ、難しい本に手がのびてしまうのか。
それは、本屋に行ってみるとよく分かります。
多読のガイドブックなどでは「oxford reading tree」 というシリーズが推奨されています。
amazonでも取り扱っていますが結構高額です。
33冊セットで9,000円くらいします。
これを本屋で手に取ると途端に購入意欲がなくなります。
なぜか。
それは、1冊がちょーーーーーーうすい、のです。
ペラペラなのです。
どのくらい薄いかというと、コップの下に敷くコースターくらい。
腰痛のときに貼るシップくらい薄い。
免許書くらいの厚みだろうか。もう少し厚みはあるかなあ。
そのくらい薄い。
で、それが1冊300円。バラで買うと700円くらいするのでです。
そのうえ、書かれている単語の総数はたったの50語しかないのです。
1冊50語しか書かれていない本で100万語読もうとすると20,000冊が必要です。
1冊300円としても600万円必要になります。(!)
実際はこのレベルの本は1万語読めば良いのですが、
それにしても6万円の出費が必要なのです。
無理でしょ。
なので、語数の多い難解本へと自ら進んでしまうことになるのだと思います。
無料ebook「oxford reading tree」を利用する
最近は本当にいい時代になりました。
6万円の出費をしなくても、無料で入門レベルの洋書が読めるのです。
読むには会員登録が必要ですが、会員登録ももちろん無料です。
https://www.oxfordowl.co.uk/for-home/find-a-book/library-page/
こちらのOXfordのサイトでは、約200冊の入門レベルから上級レベルの本が無料で閲覧できます。
ふとっぱらだぜ!オックスフォードさまさま。
https://www.seg.co.jp/sss/review/osusume.html
こちらは多読のWEBサイト。
レベル別にどんな本を読んだらよいのか、細かく紹介されています。
しかし、あまりに細かく網羅的に丁寧に紹介されているので、
一読したくらいでは、バリバリの文系脳のワタシには理解できません。
解読するのに1週間くらいかかりました。
ここでは、ピンクレベルの項目をまずみてみると良いです。
「Oxford Reading Tree(以下ORT) の Stage 1~9(略)までの本を各Stage 6-18 冊読むことをお勧めします。」
つまり、「Oxford owlの無料本を各6冊以上Stage9まで合計54冊以上読むべし」ということです。
図書館のkidsコーナーにも洋書絵本があるかも
Oxford owl は音声も出るのでなかなか便利です。
しかし、ワタシはどうもまだしっくりこない。
というのもWEBサイトがやや「重い」のです。
どうやらiPhoneに慣れているとサクッと動いてくれないと我慢ができないカラダになってしまったようです。
なんとも贅沢な話ではありますが、いまひとつ電子書籍になれないのです。(こっちが本音)
なので、やっぱり紙ベースの洋書を探すことになるのですが、購入する以外の方法となると選択肢はやはり図書館となりますね。
しかし、図書館に必ず多読向けの入門レベルの本があるとは限らないのです。
ワタシの場合はたまたま家の近所の図書館に比較的多くの蔵書がありました。
隣町の図書館ものぞいてみましたが、そこはそれほど多くの洋書は置いていませんでした。
図書館によって蔵書の方針はまちまちなのでしょう。
しかも、子供の絵本コーナーにひっそりと置いてあったりするので見逃しがちです。
借りるのが恥ずかしいというオジサンもいるかもしれませんが、
子供や孫のために借りていく人もいるでしょうから、
図書館の人も周りの人も何もいう人はいません。堂々と借りましょう。
また、ワタシの近所の図書館にはいわゆる多読向けの「Grade reader」は置いてなかったので、多読として読む本は普通の絵本と児童書が中心になりそうである。
ま、多読ガイドブックに載ってる本じゃなきゃ読みたくないという潔癖な感覚は持っていないし、むしろネイティブの子供向けの絵本や児童書が読めるなんて、生のネイティブ英語の環境に触れられる「ちょー幸せな環境」じゃないかと思っています。しかも、無料だし。
図書館の純粋な絵本や児童書だと「YL(読みやすさレベル)」とか「総語数」の表記がないので、100万語までの記録には少しやりにくさがあります。
でも、それらがないことで、かえって100万語自体を目的にすることもなくなり、基本語彙1,000語の習得に集中できるという風にも考えられます。そっちの方がメリットが大きいと感じています。
「図書館の絵本を全部読んでやる!」という意気込みも生まれてくるから不思議です。
やっぱり多読専用の本が読みたい、そんなときは貸本クラブで
多読支援の貸本もあるのです。
Apple Book Club
https://applebookclub.jimdo.com/
アマゾンのキンドルなんかより安く済ませることができるでしょう。
読むこと自体に楽しさを見つけて習慣にできるか
100万語自体を目標にしてしまうと、どうしても数だけをモチベーションにするしかありません。
あと残り98万語だとか、やっと3万語達成したとか。
まあ、つらそうですよね、コレは。
たぶん、ワタシはこれだと続かないし、仮に100万語を達成すれば、それに満足してそこで終了してしまうでしょう。
自分のことは一番分かります。
となると、100万語にこだわらずに読むことを純粋に楽しむようにする工夫が必要になります。
- 好きな作者やシリーズを見つける
- 絵本の絵自体を楽しむ
- 手の届くところに本を置いておいていつでも眺める
- 本の質感を楽しむ(良い紙を使っている絵本もあるのだ)
絵本の楽しみかた
こちらは「The Giving tree」の挿絵です。
おなじみの名作絵本だとは思いますがオジサンになって改めて眺めていると新鮮な感動があります。
余白の大胆な使い方は水墨画の世界につながるような気がしてきます。
白黒なのにカラフルに見えてしまうようにも感じます。
そして、in her shade
木は女性なのだということに気が付きます。
英語ならではの表現かなあと思います。
日本語版ではここをどのように表現しているのかも気になってきます。
そして、her leaves が shade のように彼を両手でやさしく包んでいるのです。
そんな様子が見え隠れする一部の leaves によって控えめに描かれているのです。
子供が気が付かないところで、気づかれないように遠くから守っているのです。
絵本は子供向けではありますが、大人が作っています。
色々な思いを込めて子供に伝えようと、大人のクリエイターが考え抜いて作っています。
そんな芸術家たちの思いを感じることも絵本を改めて原書で読む楽しみかなあと思います。
日常の習慣にする知恵
さらに、英語の絵本や児童書を毎日の生活の一部の中に組みこむ必要があります。
習慣にするには「今の習慣の前後に新しい習慣を加える」のが秘策です。
ワタシの最近の「新習慣」の例を挙げてみましょう。
・ストレッチ
毎晩お風呂上がりに6つだけストレッチをすることにしました。
これにより、ワタシにとって「風呂に入る」とは「風呂に入ってストレッチを完了するまで」を意味することになったわけです。
ぜひやってみて欲しいのですが、コレをしばらく続けると、風呂上がりにストレッチをしないと気持ち悪くなります。
今では12パターンのストレッチに増えています。
・鼻うがい
これは、朝の歯磨きの前にすることにしました。
「毎朝鼻うがいをしてから歯磨きをする」
もう、これもすっかり定着し、歯磨きと鼻うがいがセットになりました。
・朝ヨガ
朝目覚めたらヨガの呼吸法を行う。
時間にして5分くらいです。
調子が良く時間があるときはそのまま太陽礼拝を行います。
こんな風にいまある習慣にくっつけると新習慣も身に付きやすくなります。
ぜひ、試してみてください。おススメです。
絵本はちょっと持ち歩けないので、
寝る前と起床直後に読んでいます。
もう少し工夫が必要なところだなあと思っています。
あとは、のんびり誰とも数を競わずに地道に継続することだと思います。